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未来を創る成長領域

116.テラヘルツ波

市場概要

テラヘルツ波(terahertz wave)とは、周波数が1THz(テラヘルツ=10^12ヘルツ)付近の電磁波のことで、周波数の範囲に明確な定めはないが、概ね100GHz(波長3mm)から10THz(同30µm)の範囲の遠赤外領域を指す。この領域は電波と光の中間に位置しており、分子の振動・回転運動、分子間相互作用、固体の格子振動や半導体ナノスケール素子の光学応答、超伝導エネルギーギャップ、フォノン、プラズモンなど様々な物理現象に関わる振動数領域であることから、物質情報を反映する電磁波として、注目されてきた。

極微量の分子の同定のほか、可視光が透過できない繊維や紙、プラスチックなどを透過できることから、非破壊検査などへの応用、さらには、宇宙における天体形成のメカニズム解明にも新しい道を拓く可能性がある。

国立天文台は、テラヘルツ光による天体観測性能を飛躍的に向上させるため、超伝導トンネル接合を用いた高感度検出器アレイとその検出器を用いた超広帯域干渉計技術を開発している。さらに極低温で動作するCCDのようなテラヘルツ光カメラの開発を進め、宇宙創成に迫るダイナミックな画像を得ることを目指している。

また、科学技術振興機構(JST)の研究チームは2015年、独自開発の半導体量子素子による光子検出器(量子ドット検出器)を組み込んだ超高感度の走査型顕微鏡を開発し、電子がテラヘルツ周波数で振動する際に放出される極微弱なテラヘルツ放射光を一つ一つの光子の粒として画像化することに世界で初めて成功した。今後空間分解能を向上させることにより、細胞内の温度分布や、細胞や分子の振動や回転する様子をありのままに可視化するなどの応用可能性に期待が持たれる。

量子カスケードレーザは、テラヘルツ波の光源として最適であるとみなされているが、放射線を正反対の2方向に放つため、エネルギー出力量の半分が無駄になる。2017年、MITの研究チームは、レーザの後方から出ていく光の方向を転換することにより、チップスケールのレーザの出力を80%増加させることに成功した。NASAは、星間物質(星と星の間の空間を埋める物質)の組成の究明のために地球上層大気で酸素濃度を測定しており、このレーザが使用されている。このレーザは、利得媒質(レーザで光を増幅している物質)の検討によりさらなる出力の向上が期待されている。

2018年、浜松ホトニクスは、世界初の室温動作が可能な、一つの半導体チップからテラヘルツ波を発生する量子カスケードレーザを開発した。従来のレーザで必要とされている冷凍機を省くことにより、世界最小サイズを達成した。文化財の内部観察などのイメージングや薬剤、爆発物などの分光分析への応用が期待されている。

テラヘルツ波の応用には、高出力の光源の開発や高感度の検出器の開発が課題となってきたが、上記のように様々なチームにより開発が進んでおり、さらなる利用が期待されている。

主な技術要素

テラヘルツ、遠赤外、格子振動、分子振動、分子回転、分子運動、非破壊検査、量子カスケードレーザ、量子ドット検出器、テラヘルツ顕微鏡、テラヘルツ望遠鏡

確かなデータに基づき、
未来を予測する。
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