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未来を創る成長領域

52.ロケット・宇宙航行システム

市場概要

ロケットとは、内部に保持する燃料を後方に噴射することで推力を得て移動する装置のことを指す。近年多数のベンチャー企業が小型ロケット市場へと参入し、開発会社は2018年時点の推定で世界に約100社ある。ロケットの積載貨物の単位重量当たりのコストは小型では高くなるものの、打上げ日を自由に設定でき、希望する軌道へ打上げ可能なことから、需要が増している。

米国のRocket Lab社は2018年にテストを含めて3回連続しての打上げを成功させている。米国の宇宙旅行会社Virgin Galactic社から分社・設立されたVirgin Orbit社は、航空機の翼下にカーボンファイバー製の2段小型ロケットを搭載して大気圏まで運び空中でロケットを射出する。2019年には衛星打上げの予定である。

1989年英国で設立のReaction Engines 社は高速航空機と宇宙機の両方での使用が可能な極超音速推進システム「相乗的空気呼吸エンジン(SABER)」の設計開発を行う。SABERを載せて再使用回数を200回まで想定の宇宙機「スカイロン」は、水平離陸の後高度26㎞までは大気にある酸素と機内にある液体水素の燃焼でマッハ5.4まで加速し、その後は機内にある液体酸素から酸素を供給してさらにマッハ25まで加速し軌道上へと達する。初試験飛行を2019年、国際宇宙ステーションまでの航行を2022年に計画している。

宇宙機の推進機構としては2019年現在のところ「化学推進」と「電気推進」が用いられている。化学推進は主に宇宙機の打上げに使われ、酸化剤と燃料を共に燃焼させて推進する。推力は大きいが大量の燃料を使用し、一般に打上げロケットでは重量の約90%を、人工衛星では約50%を燃料が占めている。電気推進では燃料(推進剤)をプラズマ化して静電力などで加速させるが、推進剤を噴出するときの速度が大きいため少量の推進剤の使用で済み、その分荷重量を増やせる。また太陽光から電気エネルギーを作って推進力を生みだすこともできる。一方で、推力密度(単位面積あたりの推力)が低いため、ロケットのように打上げ時に短時間で速度を上げることは困難である。こうした特性を踏まえて、電気推進は「はやぶさ」などの長期探査用宇宙機の主推進のエンジンや人工衛星を軌道に保持する制御機構などに用いられている。2015年にアメリカで世界初の商用の全電化静止衛星が打上げられた。この衛星は化学推進エンジンを持たず、ロケットから放出された後、イオンエンジン(静電場によってイオン化した推進剤を加速・噴射し推力を得る)のみで約半年間かけて上昇し静止軌道へと到達した。日本においても次期技術試験衛星として全電化衛星を2021年に打上げる計画としている。

小型衛星市場の活性化に伴い、電気推進エンジンの小型化の研究開発も進んでいるが、推進剤容器にはある程度の大きさを要するため小型化には限界がある。2018年、欧州宇宙機構(ESA)は、特有の推進剤を必要とせず空気を取り入れて加速させる電気推進エンジンを新たに開発したと発表した。このエンジンを用いれば、高度200㎞ほどの低軌道にある人工衛星の寿命は推進剤の残量に制限されなくなり、衛星運用が長期間可能となる。また空気が推進剤となるため、他の惑星を観測する探査機にも応用できるという。

宇宙航行システムの推進機構のその他の例としてソーラーセイルがあげられ、これは大型薄膜を帆として用い、太陽光の光子によって加速するシステムである。世界初のソーラー電力セイルとして惑星間の航行が可能な宇宙機「IKAROS」を2010年にJAXAが打上げた。光子セイルとイオンエンジンの推進力により約7カ月かけて金星までの航行を成功させている。ソーラーセイルは低コストで製造ができ、さらに太陽から供給される安定した推進力は光子が届く限り半永久的である。また従来の推進機構よりも優れた操作性を示す場面もあり、例えば重力と反対方向の推進力がかかるようにセイルを調整すれば北極や南極の上にも静止衛星を飛ばすことができる。

小型衛星・超小型衛星の低軌道への打上げ回数の増加や宇宙空間の利用機会の拡大から、今後もロケット・宇宙航行システム市場は伸びていくだろう。

主な技術要素

人工衛星の姿勢制御装置、燃料タンク、宇宙環境試験装置、薄膜ホログラフィック太陽光コレクタ、複合材料、分散通信ネットワーク、宇宙機画像表示システム、半導体発光デバイス、移動体検出方法、天体検出装置、重力加速度の生成装置、衛星観測システム、衛星搭載用制御システム、宇宙機運動模擬装置、太陽電池、展開型アンテナ、多段式ロケット誘導方法、天体走行車両、衛星燃料供給システム、衛星管制システム、宇宙機用推進薬供給装置、ノズル、ターボポンプ、エキスパンダブリードサイクル方式、ロケットエンジン、メインバルブ、フェアリング、炭素繊維、電力シーケンス分配器、液体推進システム、軌道投入精度、固体ロケットブースター、イオンエンジン

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