5年先の社会を発信するラボ
  • 5年先の社会を発信する未来ラボ
未来を創る成長領域

118.個人識別・生体認証

市場概要

生体認証(Biometrics)とは生体(人間)の身体的あるいは行動的な特徴を利用し本人認証を行う技術で、現在、個人識別技術としてパソコン、スマートフォン、マンションのドアロックなど幅広い市場で導入されている。生体認証に用いるものは一般に、普遍性(≒およそ皆が持つもの、できること)・唯一性(万人不同)、永続性(≒終生不変、少なくとも利用中は不変)を満たすものでなくてはならない。

最も研究され、かつ身近で実用化が進んできた生体認証は、指紋認証である。指紋が万人不同で終生不変であるという証明は19世紀末に、指紋の特徴と確率論によってイギリスの学者フランシス・ゴルトンによりなされたことだが、古く有史以前から中国やインドでは、指紋で個人の異同を識別していた。なお、世界で”組織的に”指紋認証が利用されたのは大英帝国によるインド統治の際、植民地統治者が指紋により個人を管理・把握したことが最初とされている。また日本でも古くから拇印を証文等に用いる習慣があり、指紋を本人認証として利用していた。20世紀に入ると指紋認証は犯罪捜査や司法分野において犯人特定などを目的とした利用がはじまり、20世紀後半にはITの発展とともに指紋認証は誤認証が少なく分析スピードの高い技術に成長し、一般人の身分証明や財産を保護するパスワード認証の代替として活用されるようになった。

しかし指紋認証は必ずしも万全とはいえない。特に近年、カメラなど画像取得デバイスの高画質化により、”なりすまし”を防ぎきれない可能性が浮き彫りとなった。2017年、およそ2000万ピクセルの性能のカメラを使い5m以内で撮影した指紋は指紋検出に十分な解像度がある、つまりピースサインで写真に写るだけで指紋が盗まれる危険性があるとの警鐘が報じられた。2000万ピクセルは今やスマートフォン搭載カメラでも珍しくないことから、認証用の指紋の盗撮は誰にでもできるといえる。先に述べたように、指紋は万人不同で終生不変であるため、一度採取されてしまえば”なりすまし対策”が難しくなり、セキュリティの強化が必要である。

身体的特徴を利用した生体認証としては指紋認証以外に、「顔認証」、「虹彩認証」、「静脈認証」も実用化されている。指紋認証に次いで利用されているものは顔認証で、近年では2017年に羽田空港で国際線ゲートの日本人用の帰国手続きに顔認証システムを導入したのを皮切りに、2018年には成田空港、関西空港、中部国際空港なども含めて日本人の出国・帰国手続きへ顔認証システム導入は拡大された。また、2017年アメリカのアップル社はスマートフォン「iPhoneX」にて認証システムに顔認証を搭載している。しかし顔認証は「変装による偽造の恐れがあり、特に顔を隠す習慣のあるイスラム圏の女性には使えない」といった課題があり、指紋認証ほど普及していない。また、虹彩認証は「精度が高いが、光が当たると誤差が出る欠点がある」、静脈認証は「精度が高く、偽造の恐れはないがコストが顔や虹彩よりも高い」といった課題がある。

近年の新たな生体認証技術としては、アメリカのバッファロー大学が開発している心臓生体認証が挙げられる。予め8秒ほどかけて所有者の心臓の位置、形状、サイズ、動きなどをスキャンし、その後は一定時間ごとにスキャンすることで、本人であるか確認し続ける。研究チームはパソコンの前に着席/離席するだけで自動ログイン/ログアウトできるような仕組みを想定している。

さらに、行動的特徴を利用した生体認証への取り組みも進んでいるので3例紹介する。

古くから署名により書かれた「サイン」が認証として利用されてきたが、偽造も頻繁に行われてきた。最近では、署名する動作そのものも合わせて判定するシステムとして、ペンタブレットを用いる「電子サイン」が導入されている。これは書体だけでなく、筆跡、筆圧、署名時のペンの加速度なども記録できる。過去にサインをめぐる偽証などの不正行為を未然に防いだ実例もあり、利用の裾野は着実に広がっている。

「キーストローク認識証」とはキーボードのキーを打ち込む操作のパターンを認証として利用するものである。単語を打ち込む速度、リズムなどを記録しておき、再度同じ単語を打ち込むことで認証する方式である。タイピングエラーの頻度など複数のデータをとるため、本人であるかどうかを確認できるレベルになるには、かなり長い時間をかけた登録が必要である。

「手指動作(ジェスチャー)認証」は、じゃんけんなどの指先の動作をカメラによって撮影登録し、その動作の速度や癖を認証に利用するものである。近年の立体認識技術の進歩によって利用可能なレベルとなってきている。

近年は世界の主要国でキャッシュレス決済が普及し、日本政府もキャッシュレス化を推進している。そのためインターネット上だけでなく実店舗でもキャッシュレス決済可能な場面が増えてきた。決済方法には「クレジットカード決済」、「スマホ決済」などがあるが、これらは電子サイン認証、指紋認証、顔認証など生体認証と紐づけたシステムが多い。さらに現在、何も持たずに買い物ができる「生体認証決済」も注目され、指紋認証、虹彩認証、顔認証決済などはすでに実証実験あるいは市場導入され始めている。今後、生体認証データは今まで以上に財産と密接になり、セキュリティの高度化が求められてくるであろう。

主な技術要素

生体認証、バイオメトリック認証、バイオ認証、バイタル認証、静脈認証、静脈パターン認証、虹彩認証、光彩認証、顔認証、体動認証、歩行認証、歩行パターン認証、行動認証、言語認証、言葉認証、発話認証、音声認証、筆跡認証、個人識別、パターン解析、イメージデータ解析

確かなデータに基づき、
未来を予測する。
Nikkei-astamuse 成⻑領域レポート

NIKKEI astamuse

日本経済新聞社とアスタミューゼがまとめた
有望成長領域136分野のレポート販売中!

日本経済新聞社とアスタミューゼが全世界の論文・特許、国内外の国際会議やシンポジウム、
展示会等の情報、並びに独自ネットワークによる口コミ情報を活用し、
今後10年から20年のスパンで「大きく成長が見込まれる分野」を策定。

日本経済新聞社が関連ニュースなどをまとめ、
現在と近い将来の成長分野を立体的に解説します。

「2分でわかる」成長領域レポート
パンフレット(無料)のダウンロード
レポートご購入のお申し込み
PAGE TOP