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未来を創る成長領域

27.メタボロミクス・プロテオーム・omics

市場概要

20世紀後半からライフサイエンスは飛躍的な発展を遂げ、21世紀初頭にはヒトゲノム計画が完了し、ポストゲノム時代を迎えた。他の科学分野同様、ライフサイエンスにおいても、複雑な生命現象を遺伝子やタンパク質といった構成要素に分解することで、様々な知見を得て発展してきたが、そのような還元主義的手法には限界があることから、生命現象を各構成要素のネットワークとして理解する目的でシステム生物学が生まれた。

システム生物学は、数理計算モデルや統計学的手法を生物学に導入し、これまで階層別に探求されてきた生命現象を統合して理解するものであるが、システムの構成要素である個別の生命現象の解明が進んだことと、コンピュータや分析機器の著しい発展により可能となった。分析対象に「総体」を意味する接尾辞「オーム(-ome)」を付したメタボロームやプロテオームなどのオーム科学、あるいは、その学問名であるメタボロミクス、プロテオミクスからオーミクス(omics)科学と呼ばれる一連の研究分野は、システム生物学の一部となっている。

メタボロームは、生体/組織/細胞における全代謝産物を網羅的に解析するもので、サンプルから得られる代謝物の量や種類を解析する代謝物分析と、そこから得られた生データを数理統計的に解析するデータ分析から成る。

代謝物分析における主要な分析手法は質量分析法(Mass Spectrometry, MS)で、ガスクロマトグラフィー(GC)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動(CE)、フーリエ変換イオンサイクロトロン(FT-ICR)、核磁気共鳴(NMR)、赤外分光光度計(UV)などと組み合わせて、物理化学的多様性に富む代謝物の分離・同定を行っている。

また、データ分析は多変量解析を行うが、解析を行う前にクロマトグラム情報を数値データに変換する必要があり、最もポピュラーなデータ変換ソフトウェアとしてMSFACTsが使われている。多変量解析では、主成分分析、階層的クラスター分析、自己組織化マッピング、回帰分析、部分的最小二乗法などが用いられている。メタボローム解析の応用例としては、医療分野においてバイオマーカー発見のために利用されることが多いが、近年では、食味や機能性に着目した優良品種の選抜に用いたり、外観で判断が困難な果実の収穫最適時期の判定をメタボローム解析に基づいて行うなど、農業・食品分野への適用も見られる。

同様に、プロテオームは、生体/組織/細胞におけるタンパク質を包括的・網羅的に解析するもので、発現しているタンパク質を同定し、それらのプロファイリングや相互作用の分析を行う。分析手法としては質量分析をベースに、二次元電気泳動によるタンパク質の分離や、プルダウンー質量分析法(PD-MS法)による複合タンパク質の同定などを行っている。

プロテオーム解析の応用例としては、早期診断や個別化医療のためのバイオマーカーの発見や治療薬の開発が挙げられる。例えば、難治がんのひとつで症状が出にくいため早期発見が困難な膵がんにおいて、高分解能の質量分析器を用いた血漿プロテオーム解析により、検出能に優れたバイオマーカーが発見された。また、大腸がんにおいて、Wntシグナル伝達経路を遮断することで治療が可能と考えられてきたが、経路の上流にあるAPC遺伝子の80%で機能喪失変異があるため、これまで治療薬の実現に至らなかったのに対し、その最下流にある核内転写複合体の構成分子に対するプロテオーム解析を行うことで、大腸がん治療の新しいターゲット分子であるTNIKが発見された。これらの成果は国立がん研究センター(NCC)の山田哲司らによるものであるが、NCCではプロテオーム解析に加え、患者と健常者の検体に対して教師付き機械学習を行うことで感度と特異度が共に90%を超える膵がんバイオマーカーを得ている。また、NCCは、2016年に産業技術総合研究所及びPreferred Networksと共に、プレシジョンメディスンを指向した「人工知能を用いた統合的ながん医療システムの開発」プロジェクトを立ち上げており、国家プロジェクトとして推進している。

ポストゲノム時代のライフサイエンス研究は、要素還元主義からビッグデータ解析のようなデータ駆動・統計解析型へと移行し始めており、生物学や医学、農学、薬学だけではなく、数学や化学、工学、情報科学など様々な研究分野による集学化・横断化が進んでいる。omics科学を含むシステム生物学は応用範囲が広く、今後のライフサイエンス研究において主流となることが期待される。

主な技術要素

質量分析法(Mass Spectrometry, MS)、ガスクロマトグラフィー(GC)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動(CE)、フーリエ変換イオンサイクロトロン(FT-ICR)、核磁気共鳴(NMR)、赤外分光光度計(UV)、クロマトグラム情報を数値データ変換ツール、次元電気泳動によるタンパク質の分離、プルダウンー質量分析法(PD-MS法)など

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