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未来を創る成長領域

53.有人宇宙探査・スペースコロニー・スペースラボ

市場概要

1961年世界で初めてソ連が有人宇宙飛行を成功させて、人類は宇宙への有人探査の幕を開け、1969年米国は月面着陸を果たした。冷戦の緊張緩和が進むと、有人での宇宙探査は巨額な費用を理由に1972年に中断されたが、国際宇宙ステーション(ISS)や再使用を可能とするスペースシャトルなどで技術開発は続けられた。2004年に米国は、人類の開拓精神や探査のための技術革新の恩恵を理由に有人での宇宙探査再開を発表し、各国に協力を呼び掛けた。これを受けて国際協力のもとに、太陽系探査の拠点として新しく月周回軌道上の宇宙ステーションLuna Orbital Platform-Gateway(LOP-G)の建設を計画している。2026年頃完成予定のLOP-Gを足掛かりとして、アメリカ・日本・欧州・カナダなどが協力し2030年頃に月面探査を行う計画とし、その後火星を目指す。一方中国は独力で2030年以降に有人での月面探査の成功を目指す。有人による月面探査の実施には、LOP-Gや月面への物資の輸送が必要である。2010年に日本で設立されたispace社は2022年を目標に地球と月の間の輸送サービス・プラットフォームを構築するとしている。

2016年からJAXAは大学や企業との共同開発の製品を、宇宙探査ではJAXAが用い、企業は地上でのビジネスにつなげるというシステムを始めた。このシステムを活用して、安川電機は小型高トルクのアクチュエータを新たに開発した。これを用いて厚さ40㎜のモータユニットを作成し、下半身の作業支援や歩行支援に用いる装置としている。月面などの地球と異なる重力下では、歩行速度を重力に合わせて変えないとバランスを崩して転倒し、宇宙服に傷をつける危険性がある。この装置を宇宙服に装着することで安定した歩行を可能にすると考えられる。

スペース・コロニーとは食料の自給やエネルギー・空気・水の創出が可能な、人類が宇宙で長期滞在できる巨大施設のことを指すが、宇宙での巨大構造物の建設実現は容易ではない。2019年に米国のGateway Foundation社が宝くじの売上を資金源とし、地上400km地点に直径488mのトーラス形軌道ステーションを建設すると発表した。回転により人工重力を発生させるとしているが、建設方法など詳細な計画には触れられていない。2018年に日本で設立されたOUTSENSE社は、折り紙構造物を用いた、月あるいは宇宙での空間デザインを事業とし、宇宙での人の居住施設を設計している。同社は2019年3月開催の世界最大級の展示イベント「South by Southwest」への出展費用につき合同会社Yspaceからの資金をクラウドファンディングの形で受け入れている。Yspace社は宇宙向けのVRコンテンツの開発をしており、同社代表とOUTSENSE社代表は前述のispace社でインターンをしていた。宇宙ビジネスに参入する日本発ベンチャー企業が増えている。

OUTSENSE社が手掛けるような、宇宙での生息環境を設計・構築する分野を宇宙建築という。NASAでは100周年記念の課題として、「3D-Printed Habitat Challenge」という3Dプリンタを用いて創造できる火星などでの住宅のコンペを2014年から5年かけて開催している。 コンペ上位に残るSpace Exploration Architecture社は火星での住居として、レゴリスの下に存在する地下氷を壁在に用いるアイデアを提案した。太陽光を豊富に取り入れながら宇宙放射線の遮蔽が可能な住居としたことで注目を集めコンペに残っている。

スペースラボとは無重力・微小重力など地上とは異なる環境を活用して研究を行う施設を指し、古くはアメリカのスカイラブ(1973-1974)やソ連のミール(1986-2000)などの宇宙ステーションの付属実験モジュールや、現在のISSの日本の付属実験モジュール「きぼう」などがそれにあたる。例えばきぼうで行われている、微小重力という環境を活かした「高品質タンパク質結晶生成実験」があるが、東京大学発ベンチャーのペプチドリーム社は2017年にJAXAと戦略的なパートナーシップ契約を結び、この実験での結果を用いて医薬品創成の早期実現を目指す。また、イスラエルとスイスのベンチャー企業SpacePharma社は、CubeSat衛星内を無人のスペースラボとして6カ月間23万米ドルで使えるサービスを提供する。このラボには透過型顕微鏡や分光計を備え、リアルタイムで実験結果分析と次の作業への指示が行える。

有人宇宙探査やスペースコロニーは技術的に乗り越えるハードルが高く、市場化にはまだ時間が必要と思われる。一方、小型衛星を用いたベンチャー企業によるミニラボの提供は進展しており、スペースラボの市場は活発化していくだろう。

主な技術要素

国際宇宙ステーション(ISS)、宇宙空間、移住可能、スペースコロニー(space colony:宇宙植民島)、人口爆発、地球環境異変、ラグランジュポイント(Lagrangian point)、重力、周回軌道、円制限三体問題、自転、植物工場、食料の自給、建築設計(宇宙建築)、球形、バナール球:Bernal sphere)、人工重力、太陽光線、季節、太陽発電衛星、農業衛星、space habitat(宇宙居住船)、space settlement(宇宙共同社会)、化学ロケット、輸送能力、輸送コスト、燃料、環境への影響、宇宙エレベーター・軌道エレベーター(Space elevator)、強度を持つ素材、カーボンナノチューブ、テラフォーミング(terraforming:惑星地球化)、惑星環境

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