5年先の社会を発信するラボ
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未来を創る成長領域

135.ライブエンターテインメント・舞台芸術

市場概要

戦後の高度経済成長期以降の日本人の消費行動は1950年代後半の家電製品の三種の神器※1や1960年代半ばの新・三種の神器※1に象徴されるように、モノの所有価値が重視される「モノ消費」が重要視される傾向にあった。しかし2000年頃から消費者の価値観やお金の使い方が大きく変化したことを印象づける意味で、「コト消費」というワードが使われるようになった。これは所有のためではなく、趣味、行楽、演芸の鑑賞などで得られる「特別な時間、体験、サービス、人間関係」が購買の判断基準として重視される支出を指しており、本市場であるライブエンターテインメント・舞台芸術も、このようなコト消費の一つである。

この市場の一つにスポーツ観戦がある。コンピューターゲーム、ビデオゲームなどを使ってプロゲーマー達が対戦するe-Sports(electronic sports)が世界的に注目されており、現地スタジアムの観客動員数が増えている。2018年より東日本電信電話(NTT東日本)社は、高品質で安定した通信ネットワークや保有する通信ビルのスペース等を活用し、e-Sportsに必要なICT環境の提供を開始した。たとえばカプコン社が2018年に秋葉原で開催した国内最大級の大会「ストリートファイターリーグpowered by RAGE」グランドファイナル大会では、宮城のパブリックビューイング会場へ配信したほか、来場者向けに東京-宮城会場間での対戦環境を提供し楽しませた。

2019年に東京国立博物館のTNM&TOPPANミュージアムシアターにて行われた特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」では、京都の東寺が所蔵する立体曼荼羅※2を再現するVR作品「空海 祈りの形」が上演された。立体計測技術、デジタルアーカイブデータ、凸版印刷社のVR技術によって21体の仏像が高精細に再現され、東寺では見ることできない角度や位置から1体1体を拡大するなど、VRならではの視点で立体曼荼羅を鑑賞するシステムであった。立体曼荼羅は作製当時最も先鋭的に密教を表わしたと言われているが、本展示はそれを現代の先鋭的手法でライブエンターテインメント性をもたせて紹介する興味深いイベントといえよう。

屋内ライブなどではドローンを活用する動きがみられるが、2019年にNTTドコモ社は、従来のドローンとは異なる「飛行船(風船)型ドローン」を開発したと発表した。従来のドローンはプロペラにて飛行するが、飛行船型ドローンはヘリウムガスが充填された風船の浮力によって浮遊し、風船の横に取り付けられた音波振動モジュールによって移動する。長所は「風船でできているので、人やモノに衝突しても大きな怪我およびドローンの破損が起きにくい点」、「プロペラがないので、飛行時の音が静かな点」、「高速移動はできないが飛行時間が一般的なドローンより長い点(最大飛行速度は約20cm/s、連続飛行時間は約1~2時間)」、「風船の素材によって空飛ぶプロジェクターとして新たな空間演出を生み出すことができる点」が挙げられている。2019年に幕張メッセで行われる「ニコニコ超会議2019」の「日本電信電話ミカカランド・NTT超未来研究所6」にてデモ体験行われる予定である。

また本市場において人に作品への没入感を与えることは、クオリティを高めるうえで重要視されており、その方法の一つとして「舞台演出」がある。たとえば2017年にDAZZLE社が主催したダンス公演「Touch the Dark(タッチ・ザ・ダーク)」は、2018年末現在すでに再演を2度行っている話題の作品である。劇場に客席と舞台の区別がない「イマーシブ(没入型)シアター」と呼ばれる手法で、自分の足で歩き回って各場所で繰り広げられているパフォーマンスを体感する。「イマーシブシアター」は2000年代のロンドンで発祥したもので、圧倒的な臨場感が演出できることが当時から高く評価されていた。これまでにダンス公演だけでなく謎解きをさせるといった作品もある。

このほか没入感を与える技術として、3人組テクノポップユニットPerfumeのライブが挙げられる。パフォーマンスを披露する際、「ダイナミックVR;カメラに連動して背景が変わり、CG合成なしで仮想空間にいるように見せる技術」や、「シームレスMR;現実空間と仮想空間を継ぎ目なく行き来する技術」が活用されており、映像技術とPerfumeの動きの一体感に人々は引き込まれる。このように本市場は様々な技術を柔軟に取り入れている市場である。今後もテクノロジーの発展とともに進化し、我々の生活の質を高める有意義で付加価値の高い作品を提供する市場になっていくであろう。

※1 三種の神器は冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビを指す。白黒テレビの代わりに炊飯器、あるいは掃除機が入る場合もある。新・三種の神器は乗用車、クーラー、カラーテレビを指す。頭文字がすべてC(Car、Cooler、Color television)であることから3Cとも呼ばれた。

※2 立体曼荼羅は、弘法大師空海が言葉では伝えにくい密教の教えを視覚的にわかりやすく表現するため構想した。国宝16体・重要文化財5体の合計21体の仏像で構成されており、平安時代前期の密教彫刻の最高傑作と言われている。

主な技術要素

プロジェクションマッピング、モーションキャプチャー、3Dホログラム、投げ銭等インタラクティブ体験、VR、AR、MR、空間コンピューティング、多視点映像、映像・音声の同期・合成技術、5G通信、ドローン、など

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