5年先の社会を発信するラボ
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未来を創る成長領域

44.軽量化設計・低燃費車両

市場概要

自動車を含む輸送機器のエネルギー消費量抑制は喫緊の課題であり、これには2つの解決手法がある。一つはエネルギーロスを低減すること、つまり仕事量に対するエネルギー消費率を減らすことである。もう一つは車両自体の重量を軽量化することである。

前者は従来から継続的に改善されてきた内燃機関の熱効率改善である。現在のエンジンの熱効率は30~40%程度であり、現在これを60%程度まで改善させることが可能であると考えられている。燃焼エネルギーの60%は排気損失・冷却損失・機械摩擦損失・ポンプ損失として廃棄されており、ミッションやタイヤを動かす運動エネルギーを差し引くと、残りのエネルギーは20%を下回っている。そのため、これらの動力に変換されない損失を極限まで低減させることが求められており、燃料効率の改善よりも損失自体の低減に軸足を置いた実用化が進められていくと考えられる。特に、排気損失の低減に関しては自動車の排熱の高効率回収を目指した高性能熱電変換材料を使った熱電素子の開発や、それによる排熱発電システムの開発などがエネルギー分野への転用技術として期待されている。

一方、欧州を中心に、内燃機関による車輪駆動から電気自動車(EV)への移行がなされつつある中、次世代のバッテリーとして注目されているのが東工大らが研究を進めているリチウム空気電池である。ワーテルロー大学の研究によれば、リチウム空気電池では充電電気量と放電電気量をほぼ等しくできるとされており、極めて電気エネルギーのロスが少ないことから、エネルギー効率の向上が可能である。リチウム空気電池が実用化すれば電気自動車の駆動のみならず、スマートグリッドにおける分散型電源・蓄電装置やIoT社会における電源としても使用され、社会全体としてのエネルギーロスの低減につながることが期待されている。

他方、軽量化については、これまで構造部品点数の削減や従来と同一材料前提での加工プロセス改善など、極力既存の設計思想に手を加えない手法が採用されてきた。しかし、エンジンの電子制御ユニットや安全運転支援システム機器(センサ・カメラ・車間通信システム)などの搭載により、自動車の電子部品比率は2015年には2010年比で倍増している。また、自動運転システムやIoT機器などの搭載による重量増加が必然であり、自動車構造全体での軽量化が必要な状況にある。そのため、構造部位毎に技術要求を満足する比重の軽い材料への変更を行うマルチマテリアル化の検討は喫緊の技術課題である。

そこで、現行の高張力鋼に代わる軽量な材料として注目されているのが、熱可塑性炭素繊維強化複合材(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics)・熱硬化性炭素繊維強化複合材(熱硬化性CFRP)である。新たな設備投資や材料・設計開発コスト、技術導入リスクを考慮すると、比較的安価なCFRTPをEV・燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)へ適用することが想定される。そして、より高い信頼性を求めて熱硬化性CFRPによる軽量化技術開発に移行していくと考えられる。既に、自動車よりも技術要求の厳しいボーイング787旅客機(2011年就航)では主翼や胴体といった重量比の大きな主要構造部材へ大規模に適用した実績があり、成型技術や塗装技術などが同時に確立されていくことが期待される。また、熱硬化性CFRPを大量に使用する場合には一度硬化した製品以外の未使用部分の再利用を考えるリサイクル技術、根本的な材料ロスをなくすため、3Dプリンターによる積層造形技術などが同時に確立されていくことも期待されている。

また、自動車構造をマルチマテリアル化するためには、異種材料の部品同士の接合が不可欠であり、接着性がカギとなる。CFRTPとアルミ合金との接合には、高速回転する工具の摩擦熱により樹脂を加圧溶融して接合する摩擦重ね接合法(FLJ:Friction Lap Joining)や金属材料側からのレーザー照射により樹脂を加圧溶融して接合するLAMP法(Laser-Assisted Metal and Plastic Joining)が有効であることがわかっており、これらの技術確立とその他の異種材料との接合にも応用できることが実証されることにより、自動車構造の軽量化技術は大きく前進することが期待される。

このように、低燃費化技術によるエネルギー排出量抑制への貢献は限定的ではあるものの、自動車構造全体としての軽量化技術を確立することにより、将来的には大きな寄与が期待される。

主な技術要素

・小型・軽量・高出力密度燃料電池、大容量、超高性能二次電池技術

・新アイドリングストップシステム

・水素製造、高密度水素貯蔵技術

・HEV/EV制御技術

・エネルギー回生技術

・新燃料、バイオ燃料による二酸化炭素低減技術

・CVT(無段変速機)の変速制御の最適化

・タイヤの転がり抵抗の低減

・超軽量高強度金属・非金属、材料の加工・接合技術、最適設計化

・駆動系の効率向上

・高電圧化(車両配電系)

・駆動、タイヤ、空力、材料などの複合化やマルチマテリアル化

・走行抵抗の低減

・熱効率やエンジンの効率向上

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