5年先の社会を発信するラボ
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未来を創る成長領域

92.中・大規模木造建築

市場概要

農林水産省によると、2016年度に新築・増築・改築を行った3階建て以下の低層公共建築物は26.4 %で、2010年度の17.9 %に比べて増している。低層市場は活発化しているが、”中・大規模”の木造建築市場の普及はまだ十分ではない。この背景には、第二次大戦後の2つの点が影響している。一つは戦後の人口増加や産業発展の影響で過伐され、森林が荒廃したため国内産の建築用木材の供給が減ったこと、もう一つは公共の建築物において防耐火に力が注がれ、3階建以上の公共建築物では木造が禁止される政策がとられ、大型建築物が多い公共建築から木造が減らされてきたことである。そのため、国内の人工林が育ち森林資源が回復しても、十分活用されない状況となった。

しかし近年、木材の積極利用による森林および林業再生のため「公共建築物等木材利用促進法」(2010年)が施行されるなど、中・大規模の建築物において木材が推進される動きがみられる。先の法律では、公共建築物の木造化などを進めることで住宅など一般建築物への波及効果を含めた木材全体の需要拡大が見込まれている。また、木材を利用した建築物の防耐火に関する実証実験が加速的に行われ、そのデータには現在の技術によって建築物が燃えながらも安全性が担保※1可能という結果も示されている。

2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会では、地方創生、地域活性化につなげるため、木材を活用した建設が進められ、これにより高度な日本の木造建築を示し、日本の再生を示す。2019年4月現在建設中の新国立競技場(オリンピックスタジアム)は、2015年に大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体で提案されたものである。これも木材を多く使っており、たとえばスタンドを覆う屋根やこれを支える片持ちのトラスには木が使用されている。特に、今回屋根の構造でポイントとなっているラチス材※2には47都道府県で生まれた杉の集成材を使用し、日本の一体感を表現している。

木造建築は必ずしも日本特有のものではない。欧米などでは持続可能性※3をキーワードに木造の再評価が進み、たとえばイギリスでは2016年に80階建ての高層ビル建設構想が提出されている。こうした動きは「木材の革命(Innovations in Wood)」と呼ばれ、1995年頃オーストラリアを中心に発展してきた新しい材料CLT※4が高層建築に取り入れられたことがきっかけと言われている。日本においても2013年、CLTは日本農林規格(JAS規格)に制定され、今後、世界と同様に高層木造建築が増えていくことが推察されている。

※1 燃えながらも安全性を担保するとは、建築物が「火に対してゆっくり燃えること」、「燃え抜けないこと」、「燃えても壊れないこと」などを指す。

※2 新国立競技場においてラチス材は上弦・下弦材の座屈止めとして働くとともに、屋根面のブレースとしての役割も担う。

※3 森林は温室効果ガスと言われるCO2を吸収し、その炭素がセルロースなどの物質として固定化されているため、木材を使って建築物を建てれば、蓄積した炭素は固定化されたままになり、森林資源を利用する文化を育てることは社会の持続可能性につながるとされている。

※4 CLT(直交集成板、Cross Laminated Timber)は、ひき板を並べた層をクロスに重なるように板を貼り合わせた、厚い素材。断熱性、遮音性、耐火性、軽量性、施工性が優れ、コンクリートパネルに代替する建築材料として欧州ではすでに普及が始まっている。

主な技術要素

W(Wood:木)、RC(Reinforced-Concrete:鉄筋コンクリート)、SRC(Steel Reinforced-Concrete:鉄骨鉄筋コンクリート)、S(Steel:鉄骨)、Reinforced-Steel(RCとSの混合構造)、木質化、耐火集成材、木質ラーメン構造、剛接合、モーメント抵抗接合、合わせ梁工法、鋼板挿入ドリフトピン工法、鉄筋挿入接着構法、グルードインロッド(GIR)、ラグスクリューボルト(LSB)、クロスラミナパネル(CLP)、幅はぎ板、マッシブホルツ、直交集成板、耐火性能、被覆型(メンブレン型)、鉄骨内蔵型、燃え止まり型、木質混構造、石膏ボード被覆、1時間耐火、木造軸組構法(在来工法)、金物工法、直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)

確かなデータに基づき、
未来を予測する。
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