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未来を創る成長領域

26.生体情報・デジタルヘルス

市場概要

生体情報とは、体温・血圧・心拍・筋電図・脳波などの生体が発する全ての情報を指す。デジタルヘルスとは、デジタル化された生体情報を用いて、健康促進や医療支援などを行うことを指し、IoT・拡張現実(AR)・仮想現実(VR)・人工知能(AI)・ロボティクス技術などが活用される。デジタルヘルスの役割は、医療の質の向上にあり、正確な診断・治療や緩和ケア、疾病の早期発見などに向けた技術革新が求められている。2009年、米国では、医療機関などが保有する個人の医療情報の取扱事業者を医療機関と提携する事業者まで拡大し、技術革新を進める民間団体の標準規格策定などを支援するHITECH法が制定された。米国非営利医療保険者団体カイザーパーマネンテ社は現在、所有医療施設約700か所及び約30万人の医療介護従事者と接続された電子健康記録(EHR)データベースを用い、1千万人強の会員に対し、オンラインサービス「My Health Manager」を展開する。会員は、治療履歴や健診の診断画像・動画閲覧の他、外来入院予約や医師との治療方針の相談などの遠隔診療が可能となり、病院への外来患者が減少したという結果が報告されている。

眼科診療では、眼底検査などで画像による診断が重要視される。2018年4月、米国IDx社は、AI医療機器「IDx-DR」を開発し、FDA(米国食品医薬品局)の承認を得た。これは、撮影された網膜画像をAIが分析し、軽度以上の糖尿病網膜症に対し、医師の解釈を得ずに診断結果を出すことが可能な自律型AI診断システムである。株式会社トプコン製の眼底カメラの使用などにより、眼科医と同程度の発見精度を有しており、早期の診断と治療による失明の予防が期待される。

デジタルヘルスを用いた遺伝子情報の治療への応用も試みられている。例えば、ガン治療では生検により、複数個所の遺伝子情報を複数回取得することで、腫瘍組織の空間的・時間的な異質性を把握し、治療反応性や予後状態が予測されている。一方で、2009年、英国で生まれた「ラジオゲノミクス」という考え方が、国内にも浸透しつつある。これは、AIに放射線画像の特徴と遺伝子配列の変異との相関関係を臨床データとともに深層学習させ、AIが診断毎の放射線画像から、遺伝子配列の変位予測による疾病の予後予測や治療方法を提案するものである。2017年、米国Mayo Clinicによる脳腫瘍に対する診断予測研究が行われ、国内でも九州大学にて実施されており、今後、生検無しでの診断技術の確立が期待される。その他にも、画像による診断が重視される皮膚・放射線診療においても、AIにより診断プロセスが大きく変わっていくと想定される。

近年、パニック障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの不安障害を抱える患者は、世界規模で増加傾向にあり、国内では約500万人とされる。海外で広く採用されてきた効果的な治療法として、暴露療法がある。これは、敢えて患者が恐怖を抱いている状況に直面させることで、過剰反応を緩和するものである。2018年、有限会社魔法アプリは、VRにより患者が恐怖を抱く状況を再現するソフトウェアを開発し、発汗量や心拍数、体温、呼吸リズムの測定による不安の数値化などを進めている。今後、国内の心療内科などでの治療方法として利用されていくことが期待される。

長期間に定常的な痛みが続く慢性疼痛は、心理的かつ社会的障害が重度であることが知られる。米国Applied VR社はカリフォルニア州の病院と、VRヘッドセットを用い、慢性疼痛患者の鎮痛剤の使用量や入院期間、患者満足度の変化などを調査している。小児患者にVRでリラクゼーションビデオを見せることで、痛みや不安が緩和されるとの試験結果もあり、今後、入院患者向けや小児医療の現場などの場面でのストレスや不安を緩和する役割として広く利用されることが想定される。

手術室では、様々な医療機器からモニタされるバイタルサインや医療(内視鏡・顕微鏡・MR)画像などの膨大な情報が集約されるが、相互に連結されていない。2016年以降、日本医療開発研究機構(AMED)らは、「スマート治療室(SCOT)」の研究開発を進めている。スマート治療室とは、ネットワーク化された医療機器からの情報の、手術室内外への共有とその後の利活用を想定したものである。2018年以降、国内ではデンソーらにより開発された共通インターフェース「OPeLiNK」に接続された医療機器からの収集情報をもとに、2019年から術中・術後の予測や手術効率向上のアドバイスなどを行う臨床情報解析システムの開発が始まっている。新たに導入された4K3D顕微鏡などを用いて蓄積されるデジタル臨床情報をもとに、AI Surgery(AI未来予測手術)による医療過誤や合併症の原因究明などに繋がる手術精度の向上が期待される。

主な技術要素

問診情報・検査結果・画像記録・処方等記録等の個人の医療や健康に関連するビッグデータ、データのクラウド基盤、AI画像解析、AI診断ソフトウェア、VR、AR、ロボット手術、など

確かなデータに基づき、
未来を予測する。
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