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SCOPEイベントレポート

第2回 AI医療機器ベンチャー「アイリス」と「アスタミューゼ」が考えるコロナを乗り越える戦略 Vol.3

イベント概要

アスタミューゼ 特別Webセミナー(ウェビナー)
「Beyond COVID-19 新しい世界を創り出す企業のいま Vol.1 」
~AI医療機器ベンチャー「アイリス」と、「アスタミューゼ」が考えるコロナを乗り越える戦略~
開催
2020年05月25日
場所
ZOOM Webセミナー
時間
14:00~15:30

ゲストスピーカー

  • 野村将揮
    アイリス株式会社
    執行役員Chief Creative Officer
  • 白木陽次
    アスタミューゼ株式会社
    取締役 CDO(Chief Design Officer)/CFO
野村将揮
アイリス株式会社
執行役員Chief Creative Officer
京都大学博士課程(総合学術, 哲学専攻)
白木陽次
アスタミューゼ株式会社
取締役 CDO(Chief Design Officer)/CFO
千葉大学大学院 自然科学研究科 修士(デザイン専攻)

Vol.1 はこちら
Vol.2 はこちら

川瀬:Q4は、いままでのお話の中にある気がするので、スキップして、視点を切り替えたいのでQ5に行きます。

川瀬:社員とどう向き合うかです。僕も本日48日ぶりに出社しました。メディアではテレワーク続けたい人が60%いたり、海外では社員の50%リモートにするなどといったことはあります。野村さんは、経営や事業ではなく、社員とどう向き合うかなどを、いま考えられていますか。

野村:割と僕は好き勝手やらしてもらっていまして。ただ、リモートかリモートじゃないかなどは論点ではなくて、そもそも採用時点で良い人が取れているか、そしてそれはどういうことかというと、みんながみんなをちゃんと好きかどうかということに尽きると思います。好きだから向き合えるのです。

語弊を承知で言うと、自身に明確なビジョンがあって、熱意と実行力があれば、他人が立ち上げたスタートアップには入りません。ほとんどの人が他人の熱意に乗っかってやりたいと思っているのが現実なのです。ただ、それでも、ビジョンに共感するだけでは、自分の人生を賭けられないというのは当然にあると思います。

その時、悪い意味ではなく、部活の強いところや文化祭に組織のように、好きで楽しいからやる、という環境設計をできるかどうかだと思います。それこそが雰囲気であって、カルチャーフィットであります。何よりも、このカルチャーがきちんと自己理解されていて、こことのフィット感を重視して採用していたかどうかというのが大前提です。楽しければ、努力もするし、達成感もある。こうして人は仕事が好きな状態で働くのだと思います。

OKRなどを設定した上でトラックしてフィードバックするのは、かなりの場合において小手先に終始すると思っています。ネットフリックスなどで言われるティール組織は、世界観が非常に明瞭で、自立した欧米的なプロを雇っているから成立するのです。小手先のシステムを真似るのではなく、根本はメンバーが好きか、会社が好きかだと思います。正直、みんな、本当に会社や働くの好きなの?とよく思います。僕は経産省、大好きでしたけど(笑)。

会社としてやるべきこととしては、メタに言うと、「好きで仲よくなれば上手くいくんだよね」という共通の認識を作ることが大事だと思います。たまに大企業の新規事業や万博の担当の方の相談にも乗るのですが、明らかに相談に来るチームのメンバー同士の仲がよくない。大企業でお金も時間も人的リソースも使えるのに、仲が悪いことが、初見で感じちゃうのは、僕にとっても、先方にとってもアンハッピーですよね。総じて、コロナは関係ないですね(笑)。みんながみんなを好きなチームを作る、ということだと思います。

川瀬:はい(笑)コロナはきっかけでしかなくて、やっぱり、そういう組織の在り方の原点をあぶり出してくれていることだと思います。この環境をみんなが好きって、すごく大事ですよね。いつもは、気づかない。カルチャーフィットって、やっぱり深いなぁ。本当は日本の企業も得意な分野な気がしますが、カルチャーや文化づくりは。

野村:カルチャーフィットについて話す時によく言うのは、これは決して表面的なことではないということなんですね。最後まで譲れない部分がどこなのかという事だと思います。逆に言うと、最後まで譲れないところが一致していれば、普段、コミュニケーションを高頻度で取れなくてもいい。不愛想でも、ヤな感じがしていても、めちゃくちゃフレキシビリティが高いヒトは実は結構多いのです。会社の譲れない部分で、損得で最後の部分で一致し、意思決定できるヒトは、フレキシビリティが高いのです。一方で、常にいいやつだけど、最後の最後で、「今こだわるの、そこ?」という人が、あとから見ると組織の足腰を弱める。フレキシビリティを担保するためには、それまでの職歴の中での具体的なエピソードを深掘りしていけば良いと思います。

川瀬:組織の本質ですね。僕は「本質」とか「本質的」って言葉をあまり好きになれなくて使わないようにしているのですが、ぐうの音も出ないです。

川瀬:あと2つほどお話しできればと思います。今回の視聴者の方には、当社の転職サービスの会員の方がいらっしゃいます。採用に関する視点を野村さんからお聞かせいただければと思います。コロナでも中核人材は必要になる、その時どういう視点で採用してますか?

野村:議論が難しいですね。人事の立場では、採用市場において、どういうポジションを取りたいかだと思うのですが、実はこの議論においては、雇用流動性や雇用求心力といった視点が大事なはずなのですが、実際はなかなか議論されていません。失業者数や平均単価かどうかよりも、すでに社会的に形成されている潜在的な人材プールの中で、特定のセグメントが具体的にどう動いているか、をしっかりと掴む方が、中期的には効用が高いと思っています。特に金融経済と実体経済が乖離をしている状況において、あるセグメントがどんどん転職しているとして、その人たちが何を理由に転職しているかというマクロな動向を見定めた方が良いと思います。

コロナの影響は限定的であるという議論が支配的なので、非正規やフリーランスが業務縮小の対象となり、正社員の大幅なリストラや倒産は当初の想定ほど見られていないのが現状です。しかしながら、これから1年、僕は1年半以上かかると思っていますが、市況が回復していくと、ネガティブな要因ではなく、ポジティブな要因で転職していく流れが戻ってくると思います。その時に、実は、大企業側にとってはベンチャー出身の人間を採用するインセンティブがまだあまり無いのです。経産省を離れてベンチャーに移った僕を、将来的に経産省が再度迎え入れる可能性はあっても、経産省を経てベンチャーで過ごした人間を総合商社が雇うとなれば、結構リスキーなので、一般的には可能性が低いと思います。当然ですが、AIエンジニアと僕みたいな哲学や法律に近い人間とでは、行動原理が全然違います。採用対象のセグメントをしっかり切って、採用方法やメッセージングを変えなきゃいけない。しかし大企業の採用戦略は、自社サイトや大規模な採用サービスに情報を掲載することが主流です。マスへのアプローチを求めてゼネラルなメッセージを打ちます。そうすると、本当に尖った優秀な人材にはまず刺さらない。というか、そもそも採用サービスに登録なんてしない、放っておいてもヘッドハントが沢山くるので(笑)その上で考えると、実は打ち手は無数にあるのですが…。

川瀬:いまの視点は、非常に重要で、やはり大企業は採用は往々にして下手なので。例えば、アイリスさんは、どういう採用を行うかを野村さんの視点で伺いたいです。

野村:優秀な人材がいればともかく採る、ということに尽きると思います。次に再び同様に優秀な人材が来る保証はありませんし、やってもらいたいことが山ほどあるのがベンチャーの現実なので。ただし、ビジョンに共感してもらうことが、当たり前ですが一番重要。これがあれば、仮にコンピテンシーがド真ん中の人材ではなくても、ある程度は一緒にやっていける。その後、その人がやりたいことを社内で新しいプロジェクトとしてやってもらえればいい。ただし、ビジョンへの共感がなければ、最後の最後で逃げてしまう。そこが一番大事です。

その上で、会社にとっても、その人にとってもハッピーになる設計を考えます。それは、その人の人生におけるステージ移行やキャリアパスの話でもあり、これまでのスキルセットをどう伸ばしていくかという話でもあります。

ただ、一つ申し上げると、社内でもよく話していることなので、かつ、これは一般論でもあるのですが、会社全体を俯瞰すると、事業というのは本当に複雑性も不確実性も高い。そういった課題を処理できる人間は、世の中には残念ながらほとんどいません。そういう人材をともかく戦力で採用すべきだと思います。一つの事業に没頭してPLを回していくことは大事なのですが、その事業が会社全体の事業戦略や財務状況に鑑みてどういうファクターなのか、また、採用とか、資金調達とか、マーケティングとかの文脈で、どこに位置づけられて、どこまで工数が張れて、いつまでにこういう数値を出せたら、誰に訴求できるのか、そしてそれを全体にもう一度当て嵌めて、ということを不断に継続できる必要がある。こういった人材は、リクルート、楽天、DeNAといったところのピカピカのエースでなければ難しいのが実情です。そして、日本でもスタートアップ人材はかなり高度化してきており人気も高まってきていますが、こういったコンピテンシーが無いと、役員以上は任せられないと思います。

川瀬:最後の質問です。ちょっとだけ延長させてください。野村さん宜しいでしょうか?

野村:はい、大丈夫です。

川瀬:最後は、総括的として、ニューノーマル、新しい生活様式などと言われるコロナ後という未来を考えながら、お話でできればと思います。アイリスさんが進んで行きたい方向も含め話していければと思います。

野村:いやぁ、面白い話ですが、僕から見えている世界では、5年とかで忘れちゃうんじゃないかと思っています。リモートワークが一般化すると叫んでいる人も大勢いますが、たとえば日本企業ひとつ取っても、そんなに柔軟でもなければ合理的でもありません。ただ、楽観なものも悲観的なものを含めて、こういう事態において、誰が何を言ったか、その時にどう判断したか、どういう責任を取ったかは、すごくシビアに見ていきたいと思っていますし、漏らさず記憶するよう努めています。文字通り、その人の何たるかがよく見える局面だと思います。もちろん、リモートワーク自体は技術革新でさらに推進、普及されていくことは予想できますが、これはコロナが発生していなくても生じた事象です。

質問のご趣旨に戻ると、市況が戻った時に、或いはコロナがほぼ忘れ去られた時に、自分たちが何をしているのか、を早めにイメージしておくことが最重要であると思います。どうサバイブするか?という時に、多くの人は、「平時にどう戻るか」という議論に集中しすぎているのですが、「平時になったら我々は何をするのか」という事をまず考えないといけないのだと思います。それは、採用でもそうですし、新規事業でもそうです。例えば、お送りした論考に書いたのですが、コンサルティングやアドバイザリー系の企業は苦境に立たされると思いますが、そこでCxOをやっていた人材を自社に囲っちゃおう、みたいな。彼らはすでに転職マーケットを見ているはずなので、そういう人たちにどうリーチしていこうかを、いま、考える必要があります。

哲学を研究していて日々思うのですが、組織レベルでも、個人レベルでも、理想とする世界像や欲するモノを、獲得する、維持する、もしくは発展するために、何をするのか、という一点の話なのです。平時であっても有事であっても、自分が怪我したり入院したりしても、その点は変わらない。粛々とビジョンの実現にコミットする。そのビジョンがヒトから貰ったもので飽き足りなければ、自分で新しく打ち立てる。学者でも、個人でも、経営者でも。コロナで近しい方を亡くされた方も数多くいらっしゃり、それは大変に悲しいこととお察しします。ただ、それでも、自分は生きていく。それに尽きると思います。

白木:アスタミューゼも、そうですね、やっぱり変わらないというか、僕らは、こういう風にしていきたいと思ってやっているので、コロナが来てもそれは変わらない。技術のデータを持ってオープンイノベーションを加速させたいという想いを持ってやっています。それに対して、カルチューフィットするヒトを採用して迎えていき、そのためにビジョンを伝えていきます。一つあるとしたら、コロナ後の方が、より強くビジョンを伝えていく必要があると思っています。もっと世の中にこうしていきたいというワンステップ上がったところで話していきたいし、技術のデータを駆使して世の中にどう貢献していくかみたいを伝えていきたい。なので、野村さんの話は、非常に共感しております。ありがとうございます。

川瀬:おぉ、すごくいい話も聞けて、きちんとまとまりました。それでも、野村さんのお話は、すごく示唆に富んでいたと思います。ありがとうございました。

白木:ありがとうございました。

野村:ありがとうございました。

※Q&Aは、参加者の氏名や内容に配慮し、割愛させていただきます。

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