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SCOPEイベントレポート

第2回 AI医療機器ベンチャー「アイリス」と「アスタミューゼ」が考えるコロナを乗り越える戦略 Vol.2

イベント概要

アスタミューゼ 特別Webセミナー(ウェビナー)
「Beyond COVID-19 新しい世界を創り出す企業のいま Vol.1 」
~AI医療機器ベンチャー「アイリス」と、「アスタミューゼ」が考えるコロナを乗り越える戦略~
開催
2020年05月25日
場所
ZOOM Webセミナー
時間
14:00~15:30

ゲストスピーカー

  • 野村将揮
    アイリス株式会社
    執行役員Chief Creative Officer
  • 白木陽次
    アスタミューゼ株式会社
    取締役 CDO(Chief Design Officer)/CFO
野村将揮
アイリス株式会社
執行役員Chief Creative Officer
京都大学博士課程(総合学術, 哲学専攻)
白木陽次
アスタミューゼ株式会社
取締役 CDO(Chief Design Officer)/CFO
千葉大学大学院 自然科学研究科 修士(デザイン専攻)

Vol.1 はこちら

緊急事態宣言で考えたこと 意思決定と損切りについて

川瀬:今日の18時くらいに緊急事態宣言が解除されるようですが、48日ぶりに、一旦、正常に戻るわけですが、2月くらいから大手企業は、割と早い意思決定をしていて、在宅とかリモートを進めました。まさに1か月半前に戻っていただいて、このとき何を考えていましたか?

緊急事態宣言

野村:基本的に、世の中は複雑系で、あらゆるファクターがあらゆる事象に相関してしまいます。
一つ視点を変えてお話しますと、私は、いま、京都大学で、フランス人の哲学者のもとで研究しておりまして、彼に『エッセンシャル思考」という本を勧められて読んでみました。お勧めなので皆さんも是非読まれてみてください。

この本は何を言っているかというと、「90点以上のことに取り組め、89点以下の事を切り捨てろ」ということです。この話の前提には、禅的な思想やフィロソフィーがあり、禅の思想がアメリカ中に広がる中で京都学派が果たした役割も大きいので、この文脈でも勧められました。誰もテストで50点は取りたくないし、89点よりは90点の方が良い。ただ60点、70点のモノは簡単に捨てられるが、70点、80点のモノは、簡単に捨てられない。意思決定できない。その意思決定の時に、とても大事ことが、二つあります。

ひとつに、情報を取り入れる日常の生活導線のなかで、YouTubeやSNS、ニュースを含め、いかにして、純度が高い必要な情報だけに特化して収集する意識付けをするか。たとえば、緊急事態宣言が出されそうだということで、法的拘束力や憲法上の問題など数多くの議論がメディア上に流布しました。しかしながら極論を言えば、宣言が発出された瞬間に、結局ほとんど人が外に出なくなったじゃん!で、あの議論はひっくり返るのです。個人単位に引き付けて考えれば、メディア上の議論を何百時間観ても、具体で得られるものはあまり無いとも考えられますし、課題の基本構造を理解するのであれば新聞で十分でしょう。もちろん、社会的議論の必要性を否定するものではないのですが、あくまで個人レベルでお話をしています。

翻って、自分たちの人生や日常生活において、確度も純度も含めて、89点、80点、ひいては50点といった点数のものに惑わされすぎているからこそ、意思決定が鈍るのです。京都で哲学書を片手に鴨川を歩く生活の中で実感していますが、YouTubeやウェブニュースから離れると大分人生観が変わるので、意識的に試された方が良いと思います(笑)

二つ目に、その上で様々な意思決定の話で申し上げると、大事なのは意思決定者が明確であること、つまりは、その意思決定者にきちんと信頼がちゃんと集まっていることです。有時には意思決定者が不明確な状態が表出しがちです。中央省庁も然りで、部門などで割り切れない課題や、そもそも想定されていない課題、またそれ自体を判断できる能力が無い課題が勃発しまくります。誰が最後に意思決定をして、ケツまで拭けるのか、を念頭に置いて、かつ意思決定者についていこうと思える組織であるかどうかが大事なのだと思います。当社は、幸運にもそういう点が組織として強固だったので、安心していられました。

『失敗の本質』などでも書かれていたと思いますが、仮に日本の文化や精神性があるとしたら、日本では会議体が意思決定する、個人の名前で意思決定したがらない。これは文化性と政治体制が全て相まっているものです。たとえばアメリカでは大統領令で、大統領が個人名においてバシッと決めます。これは政治のシステムの違いなのでどちらが良いというわけではないのですが、日本は閣議決定の決定主体が閣議であるように、会議体の名前で決定することが多い。そうなると、具体の現場においては最終的な意思決定者や責任者が不明瞭なまま、また、有事であれば複雑系が一層高いので、大きな組織であるほど、それぞれの因数やファクターの影響力が大きすぎて、全ての関係者の利害を調整し切れないのです。

そこで、エッセンシャル思考に立ち戻ると、トレードオフで、「90点以上を取れ、それ以外は捨てろ」と考えられる、強く矜持のある経営者が求められるのだと思います。

川瀬:いやぁ、純度の高い情報をどう得るかは、本当に、僕自身、このもう3か月くらい様々な情報に惑わされているなぁと思いました。エッセンシャル思考、読みます。野村さん、そこで再度聞きたいのですが、90点と89点の境目って何ですか。

野村:何が欲しいのか、何がしたいのかを、しっかり言語化することが大事だと思います。内的な基準とは頑張って新しく作るモノではなく、そもそも内面にあるモノなので。これが弱いと、ベンチャーは話にならないし、個人の人生もプラプラしてしまいます。大事なのは、選択肢を一人でひたすらブレストしまくる時間を取ることだと思っています。

転職相談を年間何百件と受けるのですが、よく話しているのは、「いま手元にある選択肢のなかでAが良かったからAにした」ではなく「この瞬間、死力を尽くして取り得るあらゆる選択肢の中で、Aが最良であるからAにした。」では、天と地の差があって、無論、後者が大事です。

これを意外と皆さんやらない。新規事業とかオープンイノベーションとかも、自分の知っている会社や近しい会社から入ります。どこでも組めるならどこだ?進学ならどこにでも行けるならどの学校か?資金が無限にあるならば何をやるか?人が無限にいるなら?時間が無限にあったら?という思考実験を無数に重ねた上で、最良の選択肢を選ばなければいけない。

個人的には、言語化し切れて腹落ちできれば、90か89かではもなくて、もはや99か0かです。100はなかなか無いにしても、明らかにやるしかない、と、これはやらない、と意思決定できる状態にしておくことが大事です。だから僕も、誰かに気を遣って飲み会に出たりはしない(笑)。大学でも、研究で仲よくすれば良くて、飲み会で仲良くする気はないのです(笑)こう考えると、このウェビナーどうして出てるんだろう?

川瀬:いやぁ、それは、白木と僕が、野村さんに会いに行って、セミナーの話したら、セミナーの話どころか事業の話になって面白かったからです。

野村:そっか。でも、面白いのは大事ですね。

5月現在における今後の事業の見通しについて

川瀬:半分過ぎたのに、まだ3問目です、スミマセン。5月のいま、過去を振り返り、いま、どうしようみたいな話ができればと思います。

野村:僕らは、ただ愚直に頑張っていこうというだけなのですが、この文脈ですと、危機の時に張り切る経営者っているらしいんですね。例えば、楽天の三木谷社長は、大きな危機の中ですごくエンジンが入っていると、各方面から耳にしています(笑)

少し別の話をしますが、大きな危機を超える中で、企業のビジョンやミッションが変わったりリフレーミングされたりします。このときに、人文学系の専門性を有する人に、そのリフレーミングは、企業の体質を変えたのか、通底するモノは変わらず昇華されたのか、を判断させると、その企業の何たるかが見えてくると思います。リフレーミングされたビジョンやミッションステートメントが、この会社に元々あったものなのか、キレイにまとめただけのものなのかは、シビアに見据えた方が良いです。

また、各社の様々なレポートは通読した方が良いと思っておりまして、ドリームインキュベータ―の三宅さんは経産省のときに仕事でご一緒させて頂いたこともあるのですが、本当にドリームインキュベータはすごくいい会社です。アスタミューゼさんとも連携されていますが(笑)ドリームインキュベータ―のレポート※は素晴らしいです。耳障りのよい分かりやすい言葉ではなく、きちんとしたファクトでレポートしている会社は、クレディブルであるし、このクレディビリティを判断できる人間を会社に置いておかないと、小手先の流行に惑わされてしまう。各メディアやニュースなどをチェックできる社内体制を持っておかないと、間違ったものや不適切なものを正しいと思ってしまい意思決定する。それが10回とか続いちゃうと、なかなかリカバリーができません。

※参考:DIレポート:「アフターコロナにおける成長・事業創造について」

川瀬:その話は身につまされる話ですね。

白木:私たちもプレスリリース※を出していまして、野村さんは仰る通りで、当社は社内で分析部隊や薬学や医学博士たちが、技術や将来がどうなるかを分析しています。

常に技術やファクトをどれだけ分かっているか、どれだけ理解しているかで、今後の未来予測が変わってくるかと思います。各企業さん、色々状況があるなかで、科学的な知見や技術的な知見をストックし、収斂していくことは非常に大事だと思います。その上で世の中に情報発信していく。未来はこうなるであろう、このようなことが生まれるからこそ事業をこうしていこうというのは非常に重要だと思います。ドリームインキュベータ―の三宅さんは、二回ほどお食事させてもらって、社も連携しているのですが、やわらかくも非常に判断が早い素晴らしい会社ですね。

※参考:With/Afterコロナで進化が加速する20分野の未来と、解決が早まる26の社会課題 ~「個人」「企業」「社会」で、短期、中期、長期それぞれにおけるWith/Afterコロナがもたらす変化とは

Vol.3 はこちら

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