5年先の社会を発信するラボ
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SCOPEイベントレポート

第1回 ヒトと水の未来を変える Vol.2

イベント概要

SCOPE Lab The Real「テクノロジーで解決する社会課題105」
第1回 ヒトと水の未来を変える
開催
2020年02月06日
場所
千代田区神田須田町2-9-5 柴田第一ビル
時間
18:00 〜 20:30

ゲストスピーカー

  • 田原康博
    株式会社 地圏環境テクノロジー
    代表取締役社長
  • 吉賀智司
    株式会社 FullDepth
    代表取締役 COO
田原康博
株式会社 地圏環境テクノロジー
代表取締役社長
2007年に入社し、流域モデリングによる水資源管理や、流体・化学反応連成シミュレーションを用いた休廃止鉱山における発生源対策、地層処分施設における腐食ガスの移行モデリング等に従事。
2018年10月より現職。
吉賀智司
株式会社 FullDepth
代表取締役 COO
代表取締役社長の伊藤とは大学時代の音楽仲間&釣り仲間。
国内大手ベンチャーキャピタルを経て個人事業を行っていた2015年、伊藤から事業計画について相談されたことを端緒に、深海に潜るロボットの企画を温めてきた。
2016年3月株式会社FullDepth取締役就任。
2019年9月代表取締役COO就任。

FullDepthの取組

吉賀:改めまして、FullDepthの吉賀です。株式会社FullDepthと申しまして、筑波大学発の企業です。海のない筑波で、なんでこんな会社が生まれたのか?とよく言われます。

最初は、エンジニアの伊藤と筑波大学の工学系の教授である中内の2名が設立した会社です。

伊藤は私の同級生で、オーケストラで楽器を一緒に吹いてました。伊藤は大学1年生からアルバイトでセンサデバイスやロボットを一人で作ったりしていて、機械の設計、回路、組み込みソフトの開発ができます。何か動くものを誰よりも早く作れる発明家タイプの人間です。最初ベンチャーに入社するも、結果的に個人事業をやりはじめ、仕事を受けていたらボリュームが増えて会社にしなければならなくなったという経緯です。

イマドキのスタートアップのような狙いがあって会社を作ったわけではなく、好きでロボットを作っていたら成り行きで会社になったという形です。当初は空間知能研究所という名前で発足し、ハードウェアの受託開発会社でした。

※FullDepth 伊藤代表取締役社長

伊藤と中内の出会いもユニークでして。筑波大学はゼミだけではなく、クラスの担任がいるのですが、伊藤がアルバイトばかりして学校に来ないのを心配して、クラス担任の中内が「おい、留年するぞ、学校に来いよ」と叱っていたいう仲からのスタートです(笑)。

ところがある日、中内が研究室の所属生にロボットを作らせたところ、想像以上に出来が良いものが上がってきたことがありました。「これ、本当に君が作ったの?」と聞いたら、『実は後輩に作らせました』との返答。「その後輩を連れてきなさい」と中内が依頼したところ、後日連れてこられたのが、学校に来ない伊藤くんだったという出来事がありまして(笑)。「お前は学校に来ないでこんなの作ってたのか!」というのが二人が関係が深くなったきっかけです(笑)。

そんな成り立ちでハードウェアの受託開発をやっていたら、伊藤がつまらなくなってきて、2015年の春に、VCにいたことがある私に相談がありまして、伊藤から、「自社事業の計画を作りたいから相談に乗ってくれない?」、「いいよ~。」みたいな話が、水中の事業がはじまったきっかけでした。

会って話を聞いてみると、伊藤はこう言いました。『自分の作ったロボットで深海に潜って、「ナガヅエエソ」という魚を見たいという野望をずっと持っていて、お小遣いを貯めて作りたいんだ』と。「なんじゃ、そりゃ?」というのが私の初めての印象でした(笑)。

そのようなロボットがあるのかと調べてみたら、日本語の情報はほとんどなく、あるのは石油開発や軍事領域では使われているという海外の情報ばかりでした。ただ、空を飛ぶドローンが話題になり始めた時期だったので、「深海のドローン」ということでいけないかな?と思い、スタートしました。

それでナガヅエエソのロゴが当社のシンボルとなりました。デザインは電通さんにつくっていただいきました。

最初は深海の1,000mまで潜れるものを作りました。ナガヅエエソの生息深度です。

2018年6月には、相模湾…小田原から5kmぐらい沖に出たところで実際に深海1,000m近くまで潜ることができました。985mくらいの深海で、白くて細長い生き物を見つけて、新江ノ島水族館の方に伺ったところ、「これはウナギの仲間っぽいけど、何か分からないなぁ。採取しないと分からない。」と仰っていました。なのでいつかこれを捕獲できるようになりたいなぁと思っています。

地球の7割が海で、ほとんどが深海です。一番深いのがマリアナ海溝・チャレンジャー海淵です。200mの深度が深海とそうで無い海を分ける基準です。世界の海の平均深度は3,700~3,800mといわれます。深海をできる限り明らかにしたいのでFullDepthという社名にしました。

2014年から会社がはじまり、2015年に企画を立ち上げ、投資家の方に話していったら運良く乗ってくださる方が現れまして、2016年に構想だけで資金調達することができました。最初は試しに1,000m潜れるものを作ることになりました。資金調達したのが3月16日ですが、うちの伊藤は7月1日にこの試作機を現場で動くところまで開発しました。わずか3か月半ですね。試しにこっそりと近くの池に持っていき、小雨の中動かしたことを覚えています。その後7月28日に本栖湖(富士五湖)で試験を行ない、あそこは最深部で120mくらいの深さがあるのですが、何度か浅瀬で動かしたあと、最深部にチャレンジしました。最初は「本当に潜れるかな?」、と半信半疑でしたが、意を決して潜ると、あっけないほど簡単に最深部に到達しました。その時はじめて、「これは、イケる!」と確信しました。本栖湖は、世界文化遺産に登録されているので、なかなか大きな船が入れないのです。我々が、歴史上はじめて120mの底を見たのではないかなと思っています(笑)。もしかしたら今も、ウチの試作機が湖の底にたどり着いたときの「最初の一歩」が残っているかもしれません。

当社は深海探査をテーマに事業をはじめましたが、最初の頃からわかっていたことがあります。未知の深海に潜ることは楽しいですが、現実問題として、人は数mという浅い水中であっても、本当に苦労しながら作業しているということです。なので事業をやる上ではそのような浅い水中でも活躍できるものを作ろうとなりました。

2017年6月の二回目の資金調達後、サービス開始を目指して開発を進め、18年6月、DIVE UNIT 300が完成しました。最初は機材をお客様の現場に送り、そこに当社の者が伺って、POC的にお客様が現場で必要としている撮影や作業を当社が受託して行ないました。その後レンタルサービスを開始し、19年10月には販売を開始いたしました。

特徴としては色々ありますが、お客様にご評価いただいているのが、本体と船上のPCをつなぐ光ケーブルが細くてしなやかなことと、水中の音響装置を追加搭載して、水中での自己位置や周囲の構造物を把握する機能を付加できることです。水中では電波がほとんど通らないため、映像の伝送は有線で行ないますが、これを極細の光ケーブルで行うことで、水中での抵抗を減らしながら大容量のデータを伝送することに成功しています。また水中ではGPSも使えないので、自己位置を把握するために音波を用いますが、このような音響装置を簡単に追加できるような会社は国内にほとんどありません。当社は水中ドローンの“フライトコントローラー”に相当するコアな制御部を自社開発している稀有な会社でありますが、頭脳の部分を自社ですべて把握しているため、簡単に音響機器を追加できるし、これを用いて自律航行しようとか、水中を可視化しようとか色々と取り組んでいます。

マーケットとしては2つあります。水中のインフラの点検、作業、可視化。もう一つは、水産系のアセット…養殖生け簀の点検や、海底の生物資源量を把握すること。水中でなにかをしたいときの選択肢は、これまで永らく潜水士が潜るか、5トンくらいの重量で5億円くらいする大型水中ロボットを潜らせるか、何もせず諦めるか、しかありませんでした。30年前くらいに水中テレビカメラロボットが出て、ここ2~3年で水中ドローンが出てきました。

よく聞くのが、「ダイバーさんに今仕事を頼んでいるけど、おたくの水中ドローンに何ができるの?」という質問や、「水中の状況を確認しておくべきとわかっているけど、現状は規則化されていないから何もやっていない」、ということです。私たちはダイバーさんのお仕事を減らしたいわけではありません。私達の水中ドローンはまだ不器用なので、ダイバーさんのほうが圧倒的に優れています。しかし、人が水中に潜ること自体が危険なことなので、「現状どうなっているかわからないから確認する」というような、体に無駄な負荷をかけることや、大きな危険があるかもしれない作業を、肩代わりできたらと思っています。

日本は人口が減っていますが、当然ダイバーさんの数も減っています。建設工業新聞に出ている数年前のデータでは、土木関係のダイバーさんは3,800人くらいいて、年間70~80人くらい減っているということです。実際にダイバーさんに聞くと、体感ではもっと減っていると言っています。水中での作業中にダイバーさんが亡くなる痛ましい事故もつい3ヶ月前に起こっています。それを見た従業員の親御さんから「おたくの会社は大丈夫なんですか?」と問い合わせが来ることもあり、人が潜ることを減らさなくてはならないと、当社の水中ドローンを導入してくれる潜水工事会社さんも現れてきました。

また、一昨年ラオスで起きたダムの決壊事故では、死者40人超、1万人以上が被害を受けたといいます。ダムは堅牢にできているとはいえ、万が一壊れると最も大きな災害をもたらすのがダムです。きちんと現状を把握すべきだということで、日本では国土交通省さんが水中ロボットを用いた点検を推進し、水中点検のマニュアルを発表する等、進めておられます。空のドローンにより、空気中の構造物が可視化・三次元化される動きが進みましたが、水中においても同じく可視化される動きは不可逆の流れとしてどんどん進んでいくと考えています。当社はそれらを推し進めて、水中の構造物が「あたりまえ」に見られ、より安心安全な世の中になるようにしていかなくてはならないと考えています。

当社のビジョンは大きく2つあり、水中・深海の謎を解き明かしたいという冒険心みたいなものが根底に流れていて、その上に、水中で作業中に人が亡くなるのを無くしたいとの想いから、「人間の身体を水中にまで拡張する」ことをミッションに掲げております。

事例としては、音響装置を併用した漁礁の撮影や深海の生物探査など、YouTubeに動画が上がっているので、ぜひご確認ください。お腹の赤ちゃんを見るための「エコー」のような装置で水中構造物を見つけて点検するやり方が見られます。半径50mくらいに入れば探したいものを見つけて撮影することができます。また、見ることができたら、次に何かの作業をやりたくなるのが人情です。今後はドローンから、ロボットの方向にどんどん進んで行くのかなと感じています。また、海底の起伏を追って三次元MAPを作るなどもやっています。自律航行による三次元化が今後重要になっていくと思い、東大生産研の巻先生と一緒に研究したりもしています。

一旦、以上でございます。

(会場:拍手)

川瀬:深海のウナギの話を聞いた時に、去年、ネス湖のネッシーは鰻だったみたいな話がバズったなぁと、思い出しました(笑)。そういうのが水中ドローンなら、どんどん見られますね。

社会課題にかける企業のトップのお話を聞くと、やはりそこにかける情熱だったり体重だったりを強く感じて、そういう魅力的なヒトはどう考えているのかを聞きたくなります。

そこでパネルディスカッションではなく、テーマに対して、お二人のお考えを聞いていきたいと思います。「トップの自論」と銘を打ち、聞いていきます。

Vol.3 に続きます

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